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後者については、オンライン結合禁止条項は本来、個人の権利・利益が侵害されることを防ぐことを目的として設定されたものであることから、その前提となる方策を講じることによって解除できるものと考えられる。すなわち、この条項は、「個人の権利・利益が侵害されるおそれがない場合を除き」、他の団体とのオンライン接続は禁止するという前提条件があって然るべきものなのである。ほとんどの個人情報保護条例において、この前提条件が記述されていないため、オンライン禁止という条項が一人歩きする格好になり、一律に適用され、ネットワーク化の足枷になってきたのである。

最近新たに条例を制定した市町村においてはこの前提条件をつける場合が多くなっているが、既存の条例の改正まで行っている団体は極めて少ない状況にある。自治省では最近、「オンライン結合を全面禁止している団体があるが、情報化促進にはネットワーク化が不可欠である」として、条例の改正を求めているが、個々の市町村に徹底するに至っていない。住民記録システムのネットワークの構築のためには、この前提条件なしのオンライン結合禁止条項の見直しは不可欠である。

?B 市町村間ネットワークに伴う個人情報保護方策

住民基本台帳法第11条及び12条で、台帳に記載されている事項は、何人でも閲覧を請求し、住民票の写しの交付を求めることができると規定している。これら事項は秘匿すべき情報ではなく、むしろ、公に使われることが前提となっているのである。最近、ダイレクト・メールの問題や、差別に使われるおそれから、不当な目的に使われると判断された場合には、閲覧や交付を拒否することができるという改正を行ったのである。

住民基本台帳法がそもそも、上記のような性格を持つものならば、その市町村間のネットワーク化は個人情報保護上は特に、問題にならないこととなる。しかしながら、以下の2点から、住民記録システムのネットワーク構築には、個人情報の保護の方策が必要とされる。

* ネットワーク上から、閲覧、写しの交付の申請を受けた市町村で、それが不当な目的であるか否かを判断することが極めて難しい。多くの住民票の写しの交付を受けあるいは、ネットワーク上から情報を不当に入手する等によって、多くの住民のデータを入手し、不当な目的のために利用する可能性があり、それを防ぐ必要がある。

 

 

 

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